【加計獣医学部】 図書館に本のない大学の設置認可は前代未聞ー高野孟

早稲田大学法学部の水島朝穂教授が毎週月曜日に発信しているメルマガ「直言」は、いつも新鮮な問題意識で書かれていて、私も長年の愛読者のひとりだが、今週の愛媛県今治市加計学園獣医学部」訪問リポートにはビックリ仰天した。なんと、管理棟3階の図書館の書架には本が一冊もないというのだ。

 水島氏が職員に尋ねたところ、上階に8000冊ほどあり、年内に1万4000冊になるというので、その上階を見ると「政治や哲学などに10冊程度が並ぶだけで、あとはスカスカ。獣医学専門書はまだ一冊もなく、洋書も専門の獣医学書はまだ入っていない。いくら今は教養教育中心の1年生しかいないといっても、獣医学関係の本が揃わないで授業が始まるということ自体が異例かつ異様だ」と、水島氏も驚きの連続である。しかも「法律関係の『憲法』のところを見ると十数冊あったが、その一冊が何と私のものだった(笑)」というオチまで付いている。

大学にとって図書館は命のようなもので、従って、よく知られているように、大学の新設にあたっては、図書館にどのような本がどれだけ備わっているか大学設置審議会によって厳格に審査される。本がないのに設置を認可された大学など前代未聞である。「国家戦略特区」だからこんな超法規的な優遇措置がとられたとでも言うのだろうか。

 学部棟では「3階、4階の基礎実習室は高校の理科室程度の印象だった。これからもっと整備するのだろうが、このスペースで専門的な実習や実験が可能なのか疑問が生まれた」という。水島氏自身が「獣医の4代目を継がずに憲法研究者になったという事情があり、また息子が獣医学部卒で獣医師をやっている関係」があって、ただの素人の見学者では気がつかないところまで見えてしまうのだろう。

 さらに、管理棟の斜め前の大講義室は建設中で、今年度中に完成するという。つまり「現段階で全学年を集めて講義をする大教室はないということで、これも驚きだった。私の体験でも、教養課程の講義は哲学や法学など、選択科目とはいえ、一応、全学年が受講できることが前提となる。認可の前提となる大教室が建設途上にもかかわらず授業を開始するというのは本来あり得ない」と水島氏は書いている。

 筆者の知る限りでは、この話題の学部の赤裸々な実態が明るみに出たのは初めてのことだ。国会もマスコミも、なぜこのような実地調査をきちんと行って安倍政権の腐敗堕落を指弾しないのだろうか。

日刊ゲンダイ
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